IT法務・AI・暗号資産ブロックチェーンNFT・web3の法律に詳しい弁護士|中野秀俊
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仮想通貨などのFintechで規制の対象となる「媒介」を Fintechに強い弁護士が解説

仮想通貨・デジタル通貨に関する法律

仮想通貨などのFintech関連法の規制対象である「媒介」とは

Fintech関連のビジネスが、次々と立ち上がっていますが、それに伴い、法律も次々と整備されています。

新しい法律としては、4月1日に施行された仮想通貨法(改正資金決済法)がありますが、そのほかにも、Fintech関連の法律としては、金融商品取引法貸金業法などがあります。

このような法律の中で、規制の対象となるものとして「媒介」という用語が出てきます。

例えば、仮想通貨法では、規制の対象となる「仮想通貨交換業」の定義として、次のようにされています。

  1. 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換
  2. 上記(1)行為の媒介、 取次ぎ又は代理
  3. 上記(1)(2)に関して 、 利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること

金融庁のガイドラインにみる仮想通貨の範囲・仮想通貨交換業者の該当性のポイント

また、金融商品取引法では、有価証券の売買の媒介・取次・代理。デリバティブ取引の媒介、取次、代理などを実施する場合は、金融商品取引法上の金融商品取引業の登録が必要になります(金融商品取引法 29条など )。

さらに、貸金業法では、貸金業者の貸付商品の媒介を実施する場合は 、貸金業法上の貸金業登録が必要になります(貸金業法 3条 )。

このように、金融系の法律では「媒介」に当たるかどうかで、法律規制の対象になるかが決まります。規制の対象になれば、金融規制法上の許可や登録が必要になるのです。

Fintech企業が、自社サービスのマーケティング・販売を検討する場合はまず、法律上の媒介に至る行為を実施しているかどうかを確認する必要があります 。

しかし「媒介」とは、法律用語なので、あまり使わないですよね。そこで「媒介」とは、具体的に何か見ていきましょう。

法律上の「媒介」の具体例とは

では実際、どのような行為が媒介に当たるのでしょうか。ここで金融庁が策定する監督指針が参考になります 。

主要行等向けの総合的な監督指針 平成29年6月
金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針 平成29年6月

上記指針によると、以下の行為は原則として媒介に当たらないとしています。

(1)商品案内チラシ ・パンフレット ・契約申込書等の単なる配布 ・交付
ただし、取扱金融機関名や同金融機関の連絡先等を伝えることは差し支えないが 、配布または交付する書類の記載方法等の説明をする場合には 、媒介に当たることがあり得ることに留意する )

つまり、書類の記載方法又はウェブサイト上での申込方法を説明する場合には、「媒介」に当たる可能性があります。

(2)契約申込書およびその添付書類等の受領 ・回収
ただし 、単なる契約申込書の受領 ・回収または契約申込書の誤記 ・記載漏れ ・必要書類の添付漏れの指摘を超えて 、契約申込書の記載内容の確認等まで行う場合は 、媒介に当たることがあり得る

(3)金融商品説明会における一般的な銀行取扱商品の仕組み ・活用法等についての説明

Fintech企業における「媒介」とは

Fintech企業が金融関連商品のマーケティング・販売を検討する場合、主にウェブ上でこれらの活動を実施することになります。

ウェブ上で様々な情報を提供するにとどまり、Fintech企業側から顧客に対して積極的なアクションを実施しない場合は 「勧誘行為までは実施していない 」とみなせる場合もあると考えられます。

Fintech企業が管理するウェブ上で、
・顧客が金融商品の購入手続ができる場合
・情報提供を超えて個別に顧客に対してメ ールを送付して勧誘するなどのアクションを起こす場合には、金融規制法上の許可・登録が必要になる可能性があります。

スマートフォンのアプリ上で複数の銀行口座の残高確認や入出金明細 、振込手続などを可能とするPFM(個人資産管理 )サービスを例にとりましょう 。

口座情報などを表示するだけであれば「媒介」には該当しないと考えられます 。

スマートフォンのアプリ上で、銀行口座の開設手続や送金手続を実施できる場合には、問題が生じます。

銀行APIなどを利用して顧客が申し込みの意思を伝達しているだけであれば、銀行代理業の許可は不要という整理もあり得るかもしれませんが 、実質的に契約締結に向けて関与しているような場合は「媒介」とされる可能性があるのです。