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金融事業者が行う広告に関しての法律的注意ポイント

金融事業者が広告を行う際には、消費者保護や公正な市場競争を目的とした複数の法律が適用されます。これらの法律を遵守しない場合、行政処分や罰則、さらには企業の信頼失墜につながる可能性があります。本記事では、金融事業者が広告を行う際に注意すべき法律的ポイントを具体例とともに解説します。

目次

適用される主な法律

金融事業者の広告には、以下の法律が主に適用されます。

  • 金融商品取引法

金融商品取引法は、投資家保護を目的とし、金融商品の販売や勧誘に関する広告規制を定めています。この法律では、以下のような行為が禁止されています:

虚偽表示:事実と異なる情報を広告に掲載すること。
誤解を招く表示:リスクやコストを過小評価し、利益を過大に強調する表現。

具体例としては、「元本保証」と謳いながら、実際には元本割れのリスクがある金融商品の広告を行った場合、虚偽表示に該当します。このような広告は、金融商品取引法第37条に違反し、行政処分の対象となります。また「元本保証」と謳うのは、出資法に違反します。

  • 景品表示法

景品表示法は、不当な表示や過大な景品提供を規制する法律です。金融商品の広告もこの法律の対象となります。

具体例:「この投資信託は過去10年間で年利10%のリターンを達成」といった広告が、実際には一部の期間のみのデータを基にしている場合、優良誤認表示に該当し、景品表示法に違反します。

  • 消費者契約法

消費者契約法では、消費者に不利な契約条件を隠したり、誤解を与える広告を無効とする規定があります。

具体例:「手数料無料」と広告しながら、実際には隠れた手数料が発生する場合、消費者契約法違反になります。また確実にもうかるなどの表現も「断定的判断の提供」として消費者契約法違反です。

広告表現における注意点

金融事業者が広告を作成する際には、以下のポイントに注意する必要があります。

(1) リスクの明示

金融商品の広告では、リスク情報を明確に記載することが求められます。特に、元本割れの可能性や手数料に関する情報は、消費者が誤解しないように具体的に記載する必要があります。
収益については、「○○%の収益が挙げられます」という表現はNGで、「○○%の収益(※想定)」といった確定でない表現をする必要があります。
一方、過去の収益を実績として公開することは問題ありません。ただし、過去の収益を「盛って」しまうと、景品表示法に違反することになるので注意しましょう!

(2) 過剰な利益の強調を避ける

広告で過剰に利益を強調すると、消費者に誤解を与える可能性があります。具体例としては、「この投資で確実に儲かる」といった表現は、法律に違反します。投資に絶対はないということは広告表現でも行う必要があります。

(3) 比較広告の適正化

競合他社の商品やサービスと比較する広告を行う場合、事実に基づいた公平な比較が求められます。比較広告の方法ついては、ガイドラインで詳細に規定されていますので、以下の記事を参照してください。

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(4) ステルスマーケティングの禁止

2024年10月の法改正により、ステルスマーケティング(広告であることを隠した宣伝行為)が景品表示法の規制対象に追加されました。

具体例:インフルエンサーに依頼して、SNSで自社商品について「この投資商品は本当に素晴らしい!」といった投稿をしてもらった場合、広告であることを明示せずに行えば、ステルスマーケティングとなり、景品表示法に違反します。
ステマ規制については以下の記事を参照してください。

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違反した場合のリスク

金融事業者が広告規制に違反した場合、以下のようなリスクが生じます。

(1) 行政処分

金融庁や消費者庁から業務停止命令や課徴金納付命令が科される可能性があります。過去には、虚偽広告を行った金融事業者に対し、数千万円の課徴金が科された事例があります.

(2) 企業の信頼失墜

不適切な広告が公表されることで、企業のブランドイメージが損なわれるリスクがあります。またSNSで炎上するリスクもあります。

金融事業者が行う広告で違反とされた事例

金融事業者が広告を行う際には、金融商品取引法や景品表示法などの法律に基づく厳格な規制が適用されます。これらの規制に違反した場合、行政処分や罰則が科されることがあります。以下では、実際に違反とされた事例を具体的に紹介し、どのような点が問題とされたのかを解説します。

1. 元本保証を誤認させる広告

ある金融商品取引業者が、投資信託の広告において「安全で確実な投資」と表現し、元本保証があるかのように誤解を招く内容を掲載しました。しかし、実際には元本割れのリスクがある商品であり、リスク情報を広告内で目立たない形で記載していたため、消費者がリスクを正確に認識できない状態でした。

金融庁は、これは虚偽または誤解を招く表示だとして、金融商品取引法第37条に違反と認定し、金融庁はこの業者に対し、業務改善命令を発出し、広告内容の是正を指示しました。

2. 高収益を強調した誇大広告

ある金融商品取引業者が、FX(外国為替証拠金取引)の広告で「月利20%の高収益を実現!」といった表現を使用しました。しかし、この収益率は一部の成功事例を基にしたものであり、一般的な投資家が同様の結果を得られる保証はありませんでした。

金融庁は、事実に基づかない利益の強調だとして、金融商品取引法第37条2項違反があるとして、当該業者には課徴金納付命令が科されました。

3. 手数料の隠蔽

ある証券会社が、投資信託の広告で「手数料無料」と大々的に宣伝しましたが、実際には信託報酬などの間接的な手数料が発生していました。この情報は広告内で小さな文字で記載されており、消費者にとって分かりにくいものでした。

金融庁はこの点について、消費者に誤認を与える表示があったとして、景品表示法違反であるとしました。

4. 過大な景品提供

ある金融業者が、特定の預金商品を契約した顧客に対し、高額な景品を提供するキャンペーンを実施しました。しかし、この景品の価値が過大であり、他の顧客との公平性を欠くものと判断されました。

この点について行政から指導が入り、キャンペーンは中止され、この金融業者には再発防止策の実施が求められました。

まとめ

金融事業者が広告を行う際には、金融商品取引法や景品表示法などの法律を遵守し、消費者に誤解を与えない表現を心がけることが重要です。リスク情報の明示や過剰な利益強調の回避、適正な比較広告の作成など、具体的な注意点を守ることで、法律違反やトラブルを未然に防ぐことができます。

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