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求人や人材紹介に係るインターネット広告規制を解説

求人や人材紹介に係るインターネット広告においては、労働基準法、 職業安定法、 雇用対策法、 男女雇用機会均等法による規制が重要です。
労働条件の明示義務等
職業紹介事業者や労働者の募集を行う者等が求人に係るインターネット広告を出す場合においては、 法定の労働条件を明示する必要があるほか、 労働契約締結の時点になって広告した労働条件を大きく変更することがないよう注意が必要です。
労働条件の明示
職業紹介事業者や労働者の募集を行う者は、職業紹介や労働者の募集等にあたり、従事すべき業務の内容および賃金、 労働時間その他の労働条件等を明示しなければなりません。また、新卒者の募集等を行う事業主は、積極的に過去3年間の新卒採用者数・離職者数等の情報を提供するよう努める等する必要があります。
広告で示した労働条件の変更
採用の際に、労使間で、 求人広告等の内容を変更すると合意したと認められる特段の事情がない限り、 求人広告の内容は労働契約の内容となります。なので広告で示す労働条件の記載については、十分に注意が必要です。また、当初明示された労働条件は、 そのまま労働契約の内容となることが期待されているものですから、安易に内容の変更を行ってはならず、 新卒者については、特に配慮が必要であることから、当初明示した条件を変更等することは不適切であるとされています。
なお、労働契約締結にあたって、求人企業がみだりに求人票記載の見込額を著しく下回る賃金を提示した場合、 会社が信義則違反として損害賠償義務を負う可能性もあるため、 注意が必要です 。
求人情報の表示上の注意事項
職業紹介事業者や労働者の募集を行う者は、求人広告において提供する求人情報について虚偽の表示または誤解を生じ させる表示をしてはならず 、 誤解を生じさせな いよう、 以下の事項に注意する必要があります。
1 関係会社を有する者が労働者の募集を行う場合
労働者を雇用する予定の企業を明確にし、当該関係会社と混同されることのないよう表示しなければならないこと。
→例えば、多数のグループ会社がある場合で、それが本社の採用になるのか、子会社の採用になるのかを明確にする必要があります。
2 雇用か請負か
労働者の募集と、 請負契約による受注者の募集が混同されることのないよう表示しなければならないこと。
3 賃金等(賃金形態、基本給、定額的に支払われる手当、通勤手当、昇給、固 定残業代等に関する事項)
実際の賃金等よりも高額であるかのように表示してはならないこと。
4 職種または業種について
実際の業務の内容と著しく乖離する名称を用いてはならないこと。
さらに、求人広告において提供する情報は正確かつ最新の情報に保たなくてはならず、募集の終了時や変更時には速やかに内容を変更する必要があるほか、 労働者の募集に関する情報を提供するにあたっては、当該情報の時点を明らかにすることが求められています。
年齢差別の禁止
労働者の募集および採用にあたっては、年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならず、 求人広告において年齢制限を設けることは原則として禁止されています
性差別の禁止
労働者の募集および採用にあたって、 合理的な理由なく、性を理由に差別的取り扱いをすることは禁止されています。具体的には、以下の取り扱いが、 直接差別にあたり、 原則として禁止されます。
1 総合職等の一定の職種や正社員等の一定の雇用形態について、 募集または採用の対象を男女のいずれかのみとすること
2 女性についてのみ未婚であることを要件とする等、 募集または採用にあたっての条件を男女で異なるものとすること
3 男女で異なる内容の採用試験を実施する等、 採用選考において、能力および 資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること
4 募集または採用にあたって男女のいずれかを優先すること
5 採用説明会の対象を男女のいずれかのみとする等、 求人の内容の説明等募集または採用に係る情報の提供について、 男女で異なる取扱いをすること
また、以下のような取り扱いも、間接差別にあたり、原則として禁止されます 。
①労働者の募集または採用にあたって、 労働者の身長、体重または体力を要件とすること
②労働者の募集もしくは採用、昇進または職種の変更にあたって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること
③労働者の昇進にあたり、転勤の経験があることを要件とすること
ただし、女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない職種、役職における採用等にあたって、採用の基準を満たす者の中から男性より女性を優先して採用すること等、 男性と比較して女性に有利な取扱いをすること は、雇用の分野における男女の均等な機会および待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置として禁止されるものではありません。
その他差別の禁止
使用者は、労働者の国籍、 信条または社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、 差別的取扱をしてはなりません。
また、職業安定法でも、人種、 国籍、信条、性別、 社会的身分、 門地、 従前 の職業、 労働組合の組合員であること等を理由として、 職業紹介、 職業指導等 について、差別的取扱をすることを禁止しています
したがって、たとえば、 「日本国籍の方歓迎」、 「東京都出身の方募集」 といっ た条件を付して求人広告を行うことはできません。
自主規制その他注意点
厚生労働省は、 求人メディア等の事業者を直接の対象として、 「求人情報提 供ガイドライン」を定めています。
たとえば、賃金の明示について求人情報提供ガイドラインでは、採用時に支払われる最低支給額の明示が求められています。 具体的には、一律に支払われる最下限の給与金額を表記する必要があり、 最下限の金額には、 残業手当や歩合給の変動するものは含まないようにすること、 一般的に月収とは総収入のことを指しており 一律に支払われる額ではないので、 月収や給与例の表記のみでは最低支給額の明示としては足りないこと等が示されています。
したがって、 「給与は委細面談」、 「月20万円以上 (歩合含む)」、 「給与手取り 20万円」といった表示のほか、 「月収25万円」、 「給与25歳例25万円」 といった表示は不適切であるとされています。
- 根拠のないNo1表示について
根拠なく、 「業界トップシェア等の表示等について」、「売上日本一の優良企業」 といった表示を行っていないいか。
実際の違反事例
2022年4月 就職支援サービスを提供する事業者が自社ウェブサイトやアフィリエイトサイト、 動画共有サービスにおいて、景品表示法に違反する行為を行ったことから、 措置命令が出されました。
違反とされた表示
事業者は、たとえば、 「相談からの就職率驚異の96%!!」、「エージェント面談からの就職率が驚異の96% ! 」 と表示する等、 あたかも、 事業者の サービスを利用した求職者のうち、 当該事業者から紹介を受けた企業に就職した者の割合は、 96%であるかのように示す表示をしていました。
また、「取扱企業社数2500社!」、 「2500社以上の優良求人案件 (ホワイト企 業)を厳選して扱っており、 中小企業のみならず、 大手企業への挑戦も可能です」と表示する等、 あたかも当該事業者は2500以上の求人情報を有しており 500以上の求人情報の中から求職者に企業を紹介することができるかのように示す表示を行っていました。
さらに、「書類選考なしで面接採用担当の方や企業の社長と直接交渉ができるから登録後、 書類選考なしで面接までセッティングできます」 と表示する等、あたかも、書類選考なしで、当該事業者から紹介されるすべての企業の採用面接を受けることができるかのように示す表示をしていました。
実際としては
しかしながら、実際には「就職率驚異の96%!!」 等という表示における96%という数値は、当該事業者が任意の方法で算定した、 特定の一時点における最も高い数値にすぎませんでした。
また当該事業者が有している求人情報は、最大2000社程度であって、 2500社を下回るものでした。 また、当該事業者から紹介される企業の採用面接を受けるには書類選考が必要な企業もありました。
そのため、本件表示は、当該事業者の提供する役務の内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認される不当表示であるとして、 措置命令が発出されることとなりました。
違反とならないために
本件では、就職率につき、事業者が任意の方法で算定した特定の一時点における最も高い数値を、 恒常的な実績のように表示したことが不当表示とされ ました。 一般的な就職率の算定方法と異なる方法で算定した数値なのであれば、 消費者の誤認が生じないよう. 少なくともその算定方法を明瞭に表示する必要があります。
また、 事業者がそれぞれ任意の方法で算定した数値を就職率として表示すれば、 消費者の混乱は避けられないため、 調査時点、 就職希望者や就職者等の定義や算出方法を明示することが望ましいでしょう。
また、就職率や取扱企業社数の実績を表示するにあたって、 調査時点と表示の時点で実績が大きく変動している場合には、調査時点を明記していたとしても、現状と乖離する過去の一時点の実績を表示していること自体が消費者の誤認を惹起するため、当該過去の調査結果を表示し続けるべきではありません。 さらに、「書類選考なしで面接」 と言った強調表示に対し、その限りではない例外があるのであれば、強調表示に近接した箇所にわかりやすい色や文字サイズで表示することが必要でしょう。