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暗号資産(仮想通貨)のステーキングに関する法律的見解を弁護士が解説

目次

自己保有の コインを用いて自分でステーキングする場合

自己所有の暗号資産を自らのウォレットでステーキングする場合、他者から資金を集めたり預かったりするわけではなく、金融商品取引法や資金決済に関する法律(資金決済法)などの規制に該当しません。実際にはノード運営の仕組みやブロックチェーンの仕様にもよりますが、本人が秘密鍵を保持し、報酬(リワード)を得るだけであれば、少なくとも日本の金融規制上の免許・許可を必要としません。

事業者がユーザーのためにステーキングを行う場合

事業者(例:暗号資産交換業者など)が、ユーザーから何らかの方法で暗号資産を預かり、それを活用してステーキングを実施する場合には、預り方や報酬分配の仕組みによって規制の有無・内容が異なります。

業者がデリゲート(委任)を受けるのみで秘密鍵を預からない場合

多くの PoS ブロックチェーンでは、委任(デリゲート)機能によって、自分の秘密鍵を第三者へ渡さずにステーキングを行える仕組みがあります。ユーザーは秘密鍵を保持し、事業者に対してステーキングの権限だけを委任します。この場合、ユーザーが秘密鍵を事業者に渡さないため、事業者が実質的にユーザー資産を保管することにはならず、金融規制の適用も通常は生じにくいと考えられます。

ただし事業者がユーザーに報酬を分配するスキーム設計によっては、事実上ファンド的な性質を帯びる可能性があるため、報酬分配割合やリスク分担の有無など、契約内容の細部を慎重に検討する必要があります。

事業者が秘密鍵を預かる場合

こちらは、事業者がユーザーから暗号資産を「預かる」構造になるため、資金決済法や金融商品取引法などが適用されます。大きく形態が考えられ、それによって適用される法律が異なります。

① 預託(カストディー)

ユーザーの暗号資産を保管しながらステーキングを行い、ユーザーへ報酬を還元する形態です。これは事業者が暗号資産の管理(カストディー)を行っているので、暗号資産交換業の登録が必要です。

登録済みの暗号資産交換業者であれば、その枠組み内でステーキング業務を追加的に行うこと自体は可能です。ただし、コールドウォレット規制(利用者の資産の安全管理に関する規制)など、暗号資産交換業者に課される義務は引き続き遵守する必要があります。

② 出資(ファンド)

ユーザーの暗号資産を預かり、それを元手に事業者がステーキングやその他の投資行為を行い、得られた収益を投資家に配当するなど、報酬の分配が「実際に得られたステーキング報酬と連動して変動する場合には、金融商品取引法上の集団投資スキーム(ファンド)に該当します。
その場合、二種金融商品取引業の登録が必要になるなど、ファンド規制に服する可能性があります。

③ 貸付(ローン)

ユーザーが自分の暗号資産を事業者に「貸し付ける」場合には、単純な契約問題となるため、法律的な規制はありません。ただし、「要求払い」など預金類似の性格を帯びると認定されると、別の規制が問題となることもあるため、実際の契約書上の文言や運用には注意が必要です。

ユーザー資産の保全義務とスラッシングリスク

PoS トークンには、ネットワーク上で不正を行った場合や稼働要件を満たさなかった場合などに、ステーキングしたトークンの一部が没収される「スラッシング」という仕組みを採用するものがあります。事業者がステーキングサービスを提供する際は、スラッシングによる損失リスクを誰が、どの程度負担するのかを契約で定める必要があります。ユーザーがリスクを負担する形態であればファンドに近づき、事業者が負担する場合には預託の要素が強まります。

税務上の取扱い(参考)

私は弁護士であり、税理士ではありませんので、税務の専門的なことはアドバイスはできませんが、ステーキングに対する私見を述べます。あくまで参考意見ですので、詳しくは税理士などの税務の専門家にご相談ください。

ステーキング報酬の課税タイミング

日本の所得税法上、暗号資産の取引や保有に伴い得られた利益は一般的に雑所得に分類されると考えられています。ステーキングで得られる報酬については、受取時点でその時価を所得とみなすのが基本的な取扱いとされることが多いです。その後、保有し続ける間の値上がり益は、売却等のタイミングで課税が生じることになります。

損益通算や必要経費計上

ステーキング報酬を得るために必要な設備投資(サーバー運用費用など)がある場合、その費用が必要経費として認められるかどうかは事業所得か雑所得かの判定を含め、ケースバイケースで異なります。個人でステーキングを行う場合は雑所得に区分されることが多く、他の雑所得との損益通算は可能ですが、給与所得や不動産所得など他の所得区分との損益通算は原則としてできない点に注意が必要です。

法人によるステーキング報酬

企業がステーキング事業を行う場合は法人税の計算が関係し、経費として計上できる範囲や損金算入のタイミングなどが異なります。さらに、暗号資産の保有評価方法(移動平均法、総平均法など)についても検討が必要です。

以上のとおり、税務上の論点はステーキングによって得られる暗号資産の評価額や取得時期、売却時期などに大きく左右されます。法的規制との兼ね合いだけでなく、税務リスクの把握・管理も欠かせません。

【まとめ】

暗号資産のステーキングは、相対的に手軽に利回りを得る方法として注目されている一方、日本法の下では、「カストディー・ファンド・貸付」など、どのような法律構成に該当するかを慎重に検証する必要があります。すでに暗号資産交換業の登録を受けている業者であっても、スキームがファンド型に近いと判断されれば二種金融商品取引業の登録が求められるなど、追加の手続きを踏まなければならないケースもあります。

最終的には、ステーキングに取り組む際は「自分のビジネスモデル(もしくは投資形態)が、法律上どのような枠組みに当てはまるのか」を確認し、必要に応じて専門家のアドバイスを仰ぎつつ進めるのが安全といえます。

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