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投資系スクール(株式、FX、仮想通貨)が押さえるべき法律とリスク

日本各地で株式投資やFX、仮想通貨の「投資スクール」が盛んに開かれています。プロのトレーダーやコンサルタントがノウハウを教える場として人気ですが、法律面の注意を怠ると、重大な法的リスクを招きかねません。実際に、無登録で投資助言を行ったスクール運営者が逮捕・行政処分されたケースもあります。
本記事では、投資系スクールの経営者・担当者が知っておくべき主要な法律(金融商品取引法、資金決済法、特定商取引法、景品表示法、消費者契約法など)とリスク対応策について、具体例を交えて分かりやすく解説します。
金融商品取引法:無登録の投資助言に要注意
ポイント: 特定の有価証券や為替についてタイムリーな売買アドバイスを有償で提供する行為は、「金融商品取引業(投資助言・代理業)」に該当し、金融商品取引法上の登録が必要です。
登録せずにこれを行うと違法(無登録営業)となり、業務停止命令や刑事罰のリスクがあります
投資助言OK例、NG例
一般的な投資知識の教授やテクニカル分析手法の紹介など、「現在の具体的な銘柄や取引」には踏み込まない教育に留めれば違法性はありません。例えばリアルトレード(現在進行中の相場で「この株を買いましょう」といった具体助言)や売買シグナル配信はアウトですが、市場の基礎知識や過去データを使った分析方法の指導は問題ありません。
違反の例: 過去には、有料メールやオンラインサロンで「今週買うべき銘柄」を推奨した業者が無登録営業と判断され、行政処分(業務停止命令)や刑事告発を受けています。本人は「教育サービスのつもり」と主張しても、実質的に個別銘柄の投資判断を提供していれば違法と判断されます。
違反した場合
罰則と影響: 無登録で投資助言業を行った場合、5年以下の懲役または500万円以下の罰金(併科あり)という厳しい刑事罰が科される可能性があります。さらに行政処分の内容は金融庁から公表され業界で信用を失墜し、顧客から損害賠償を求められるリスクもあります

投資スクールとしての対策
スクールのサービス内容が助言業に該当しないかチェックしましょう。講師が具体的な銘柄名や売買タイミングを示唆していないか、受講生にリアルタイムで取引指示を出していないか注意が必要です。グレーゾーンの場合は専門家に相談し、必要なら金融商品取引業の登録を検討してください。また、契約時に「当社は投資助言業務は行いません」と明記するなど、受講生との認識合わせも重要です。
資金決済法:仮想通貨(暗号資産)を扱う際の規制
ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)が教材や取引対象に含まれる場合は、資金決済に関する法律(資金決済法)にも注意しましょう。特にスクールが暗号資産そのものの売買や仲介まで行うと、「暗号資産交換業」とみなされ登録が必要となります。
暗号資産交換業とは
暗号資産の売買や他の暗号資産との交換、その媒介・取次・代理、顧客資産の管理などを業として行うことを指します。例えばスクールが自社でトークンを発行・販売したり、受講生同士の売買を仲介するような場合は該当します。
暗号資産交換業は内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ営めないと定められています。無登録で行えば3年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科あり)という罰則の対象です
暗号資産交換業の登録要件は厳しく、最低資本金1000万円以上や顧客資産の分別管理、サイバーセキュリティ対策、反社チェックなど高度な内部管理体制が求められます。そのため、教育ビジネスの一環で安易に暗号資産の預かりや売買サービスを提供するのは現実的ではありません。
仮想通貨に関する教材を扱う際も、「スクールとしては暗号資産の売買行為は行わない」旨を受講生に告知しておくと安心です。
特定商取引法:勧誘・販売方法と契約ルール
投資スクールの集客や契約形態によっては、消費者保護のための特定商取引法の規制が適用されます。同法は悪質な勧誘行為を防止するため、取引形態ごとに事業者の守るべきルールを定めています
勧誘方法ごとの規制
スクールの募集を対面で行う場合は「訪問販売」(会場や自宅での勧誘含む)、電話で勧誘する場合は「電話勧誘販売」、ネット広告から申込みを受ける場合は「通信販売」に分類されます。例えば無料セミナーに誘い出して当日高額コースを契約させるのは訪問販売(アポイントメントセールス)とみなされます。
訪問販売や電話勧誘販売では、勧誘を始める前に事業者名と勧誘目的を明示する義務があります。
また勧誘時には契約内容や価格を偽って説明したり、重要事項を故意に告げないことは禁止されています
威圧的な口調で不安を煽るなども「不当な勧誘行為」として禁止です。
契約時には内容を記載した書面(契約書面)を交付する義務もあります
クーリングオフ(契約撤回): 特定商取引法では、一定の取引について消費者に無条件解約できる期間(クーリングオフ)を認めています。投資スクールの場合、訪問販売や電話勧誘で契約した場合は契約書面を受け取ってから8日以内ならクーリングオフ可能です。
こちらは契約書面を交付していないと、永久にクーリングオフができてしまうので、事業者としては注意が必要です。

一方、通信販売(ネット申込み)にはクーリングオフ規定がありません。実際に多くのオンラインスクールでは「通信販売のためクーリングオフ不可」と表示しています。その代わり、事業者はウェブサイトに「特定商取引法に基づく表示」として社名・住所・連絡先や返品特約等を明示することが義務付けられています。

またスクール契約が長期かつ高額なもの(例えば◯年間有効のプレミアム会員権)であっても、現行法で投資スクール自体は「特定継続的役務提供」(エステや語学教室等)には含まれていません。ただし実質的に連続講座サービスに近い場合、トラブル回避のため任意で解約ルールを整備しておくことも検討すべきです。
違反時の措置
特定商取引法に違反する行為があれば、所管官庁(消費者庁や経産局等)から業務停止命令や業務禁止命令などの行政処分が下されることがあります。悪質な場合は刑事罰(懲役・罰金)の対象となることもあります。
実際に2022年には、大阪の投資スクールグループが勧誘目的を隠して集客したことなどが特定商取引法違反(目的隠匿による不当勧誘)に問われ、関係者が逮捕されています。
景品表示法:誇大広告・虚偽表示の禁止
集客のための広告や宣伝にも注意が必要です。景品表示法は、商品やサービスの広告表示について消費者に誤解を与える不当表示を禁止しています。投資スクールの分野でも、過度にうまい話を謳う宣伝はこの法律に抵触し得ます。
禁止される広告文言
「必ず儲かる」「誰でも月○○万円稼げる」といった断定的表現や、事実と異なる実績データの表示は優良誤認表示(実際より著しく優れていると誤認させる表示)に該当します。
また「今だけ特別価格100万円引き!(実は常に割引後の価格で販売)」のようなものは有利誤認表示(取引条件が著しく有利と誤認)に当たります。これらはいずれも景品表示法第5条で禁止されています。
根拠のない保証の禁止: 投資成果は本来不確実なものです。それをあたかも確実な事項のように宣伝すると、後述の消費者契約法上も問題ですが、景品表示法上も問題視されます。「根拠なき利回り保証」「再現性100%の手法」といった表示は避けるべきです。
表示内容の裏付けとなる合理的根拠データを提示できない場合、消費者庁から「不実証広告規制」に基づき資料提出命令を受けることもあります。
広告媒体にも注意
ウェブサイトだけでなく、LP(ランディングページ)、SNS広告、アフィリエイト広告などあらゆる広告形態が規制対象です。最近はステルスマーケティング(広告であることを隠す宣伝)も問題視されており、企業が依頼してインフルエンサーに宣伝させる場合も、広告であることを明示しないと企業が責任を問われる可能性があります。
違反時の措置
景品表示法違反が認められると、消費者庁や都道府県から措置命令(違反表示の取りやめ・再発防止の命令)が下されます。
措置命令に違反すると2年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人は3億円以下の罰金)といった罰則もあります。また、違反による売上に応じて課徴金納付命令が科されることもあります。
対策
誇大な表現を控え、事実ベースの正確な広告を心がけましょう。過去の実績や受講生の声を載せる場合も、平均的な成果なのか一部の成功例なのか明示します。「絶対」「必ず」といった断定的な言葉はNGです。広告文面は法律の専門家や有識者にチェックしてもらい、問題がないか確認することをおすすめします。また、ウェブサイトやパンフレットに、「※投資の成果には個人差があり、利益を保証するものではありません」等の注意書きを入れるのも有効です。
消費者契約法:不当な契約条項・誤認による取消し
消費者(個人受講生)と事業者との契約全般には消費者契約法が適用されます。スクール利用規約や受講契約書の内容が一方的に消費者不利な場合、条項が無効と判断されたり、契約自体を取り消される可能性があります。
契約取消し
勧誘や契約時に事業者が以下のような行為をした場合、受講生は契約を取り消すことが可能です。
重要事項についての不実告知:重要なポイントで嘘を伝えた場合(例:「この教材通りに取引すれば絶対儲かる」と虚偽の断言)。
不確実なことを断定的に知らせた場合:結果が確実でないのに確実と誤信させる説明(例:「1年以内に資産が2倍になる」と保証するような発言)。これは投資スクールの勧誘現場で問題になりやすい点です。
不利益事実の不告知:都合の悪い重要情報を意図的に説明しない場合(例:「この手法には大きな損失リスクがある」ことを伏せて契約させた)。
その他、しつこい引き止め(不退去・退去妨害)や過大な役務提供契約(過量契約)も取消事由です。
契約が無効になる条項
不当条項の無効(第8条〜第10条): 契約書や利用規約中の消費者の権利を一方的に害する条項は、その部分が無効になります。
損害賠償責任の免除条項: 「いかなる理由でも当社は一切の損害賠償責任を負いません」といった包括的な免責規定は無効です。特に事業者に故意または重過失がある場合まで一切責任を負わないとする条項は消費者契約法で認められません。
中途解約時の過大な違約金: 消費者が途中で受講をやめる場合に、提供済みサービスに見合わない高額なキャンセル料を課す条項も無効となります(平均的な損害額を超える部分は無効)例えば「開講前でも受講料の50%を違約金として徴収」等は慎重な検討が必要です。
契約更新や解除に関する不当条項: 「解約は事業者が認めた場合に限る」等、解除権を不当に制限する条項も無効です。
まとめ
以上の投資系スクールについては、法律上で対応すべき範囲が多岐にわたります。
事業者としては、自社の事業について全てリスクを洗い出し、適切に運用していくことが大切です!