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化粧品の広告表現で気を付けるべきポイントを弁護士が解説

目次

化粧品の広告は制約が多い

化粧品のインターネット広告においては、色々な規制があります。ここでは、化粧品の独自の広告表現ルールについて解説します。

  • 化粧品の表示に関する公正競争規約

上記に加え、化粧品のインターネット広告においては、 法規制のほか、多くの事業者が会員に名を連ねている化粧品公正取引協議会が定める化粧品の表示に関する公正競争規約(以下「化粧品公正競争規約」) へ留意する必要があり ます。

たとえば、化粧品公正競争規約では、化粧品の配合成分の特記表示 (公正競争規約6条)、 配合成分の名称を販売名に用いる場合の表示方法(同7 条)等について定めるほか、以下の表示等を不当表示として禁止しています。

・化粧品の製造方法について、実際の製造方法と異なる表示またはその優秀性 に関し事実に反する表示により、一般消費者に誤認されるおそれのある表示

・化粧品の配合成分またはその配合量について、虚偽の表現、 不正確な表現等 をすることにより、当該化粧品の効能効果または安全性について、一般消費 者に誤認されるおそれのある表示

・化粧品の効能効果または安全性について、具体的な効能効果または安全性を摘示することにより、それが確実である保証をしたかのように一般消費者に誤認されるおそれのある表示

  • 化粧品等の適正広告ガイドライン

さらに、化粧品のインターネット広告においては、 日本化粧品工業連合会が 定める自主基準である 「化粧品等の適正広告ガイドライン」1(以下「化粧品 広告ガイドライン」) も具体的な広告表現を検討するにあたって重要な指針となります。

たとえば、化粧品の広告でよく見られる 「浸透」 表現については、

化粧品の効能効果の発現が確実であるかのような暗示、 及び効能効果の範囲を逸脱した効果を暗示するおそれがあるため、 原則として行わないこと。ただし、 作用部位が角質層であることを明記した場合であって、かつ、 広告全体の印象から効能効果の保証や効能効果の範囲の逸脱に該当するものでない場合に限って表現することができる。とされています。

具体的な表現については、下記の通りです。

1 「肌への浸透」 等の表現…「肌への浸透」の表現は 「角質層」の範囲内であること。

[表現できる例]「角質層へ浸透」、 「角質層のすみずみへ」

[表現できない例]

「肌へ浸透」(「角質層」の範囲内であることが明記されていない)

「肌内部のいくつもの層* *角質層」 「肌の奥深く *角質層」 (注釈で「角質層」とあっても 「肌内部」 「肌の奥深く」という表現は、角質 層の範囲を越えて浸透する印象を与えるためNG)

「肌の内側(角質層)から…」(医薬品的でありNG)

2 「毛髪への浸透」 等の表現

「毛髪への浸透」 表現は、 角化した毛髪部分の範囲内で行うこと。

[表現できる例]

「髪の内部へ浸透」、「髪の芯まで浸透」

[表現できない例]

「傷んだ髪へ浸透して健康な髪へ甦ります」(回復的な表現であり、NG)

違反表現のチェックリスト

法令遵守のためには、自社の取り扱う商材の特性や、 自社の属する業界団体等による自主規制等の内容も踏まえ、 各社の実態に応じた広告表現のチェックリストを制作しておく必要があります。

化粧品のインターネット広告についてのチェックリストとしては、たとえば以下のようなものが考えられます

①化粧品の効能効果
化粧品で標榜可能な効能効果、 メーキャップ効果または使用感以外の効 能効果を表示していないか。

➁くすみ表現について
メーキャップ効果に関すること以外 の「くすみ」に関する表現を行う場合、 くすんで見える要因を
1汚れの蓄積によるもの
2 乾燥によるもの
3古い角質層によるもののように明確にし、化粧品の効能効果の範囲を逸脱しない表現となっているか。

小ジワに関する表現
「乾燥による小ジワを目立たなくする。」またはこれを言い換えた表現を表示する場合に、 医薬部外品等で個別承認を取得したときを除き、加齢によるシワ等を含め、 すべてのシワに効果があるものと誤認される表現や、 シワたるみ の予防や改善に効果があると誤認される表現(たとえば「小ジワを防いで美しい素肌を育てます」等) をしていないか。

小顔に関する表現
メーキャップ効果を表現する場合を除き、痩身、顔痩せ効果、 スリミン グ、 ファーミング、 セルライト等、 身体の構造機能に影響を与えられるかのような表現を用いていないか。

美白表現について
美白表現を行う場合は、 メーキャップ効果に基づくものであることに留意した表現を行っているか。
「美白パウダーでシミ、 ソバカスが消えてなくなる」 (これは、メーキャップ効果の表現をこえて治療的な効能との誤認を与える場合)といったメーキャップ 効果である旨が明確でなく、 誤認を与える表現を用いていないか。

エイジングケア表現
エイジングケアとの表現を用いる場合、年齢に応じた化粧品等の効能効果の範囲内のお手入れ (ケア)のことを「エイジングケア」 を用いて表 現したものであって、 若返り、 老化防止、 シワ・たるみの防止等の化粧品等の効能効果の範囲を逸脱した表現となっていないか。

実際の違反事例

2021年6月 化粧品会社の自社ウェブサイトにおいて、化粧品であるボディクリームに係る表示について、景品表示法に違反する行為(同法5条1号(優 良誤認)に該当)が認められたことから、 販売事業者に対し、同法7条1項の 規定に基づき、 措置命令が発出されました。

  • 違反とされた表示

問題になったサイトには、本件商品の容器包装の画像と共に、 「ついに…….. 部分痩せが可能に」、 「女の格を上げるのは塗るだけダイエット?!」、 「ダイエットにも美容にもこれ一本!」 および 「痩身効果 ホスファチジコリン 脂肪 溶解注射のメイン成分」 等の表示がありました。

  • 違反とされた理由

こうした表示が、 本件商品を身体の部位に塗るだけで、本件商品に含まれる成分の作用により当該部位に短期間で著しい痩身効果が得られるかのように示す表示との評価を受け、本件商品の品質等が実際の品質等より著しく優良であると消費者に誤認させる不当表示であるとして、措置命令が発出されることとなりました。

また、当該サイトには、 「※掲載しているお声は、個人の感想であり、 実感には個人差がございます。」、 「適度な運動とバランスの良い食事にを併用いただいた結果です。」 といった いわゆる打消し表示が表示されていましたが、消費者庁は、こうした表示は、一般消費者が問題となった表示から受ける商品の効果に関する認識を打ち消すものではないと判断しました。

  • 違反とならないために

優良誤認表示に該当するか否かは、 1つひとつの写真や文章ではなく、表示全体から一般消費者が受ける印象で判断されます。 たとえば、本件で問題になった表示のうち、 「女の格をあげるのは塗るだけダイエット?!」 という表示や「ダイエットにも美容にもこれ一本」という表示のみを単体で見ると、 本件商品に何らかの痩身効果や美容効果があることを表示するものではあるものの、 必ずしも当該表示単体では景品表示法に抵触しない可能性があります。

しかし、こうした表示と共に、大幅に体重が減少したという体験談や、痩せた女性の写真が表示されていると、本件商品を塗るだけで、こうした体験談や写真の女性のような著しい痩身効果が得られるような印象を受けます。

「体験談に個人の感想である」旨の打消し表示があったとしても、一般消費者は 大体の人が何らかの効果等を得られるという認識を抱くと考えられるとされていますので、体験談を掲載する場合には、商品の使用者の大半が得られるであろう平均的な結果に係る体験談を掲載するにとどめ、 一部の使用者しか得られないような極端な結果に係る体験談を掲載しないよう注意が必要です。

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