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弁護士が解説!生成AIと著作権について【完全版】

ロボット・AI・ドローンの法律
目次

AI技術の進歩と著作権

AI技術の進化は、私たちの生活やビジネスに大きな変革をもたらしています。しかし、その一方で、AIによるコンテンツ生成が著作権問題を引き起こすことが注目されています。

本記事では、生成AIと著作権に関する基本的な知識を解説し、企業が法律上どのような点に注意すべきか、実務的な観点から考察します。

AI利用時の法律的リスク

生成AIは業務や創作活動の効率を飛躍的に向上させる可能性を秘めていますが、同時に法律的リスクをはらんでいます。特に著作権に関連するリスクは企業や個人にとって大きな課題となり得ます。

著作権侵害のリスク

著作権侵害と言えるためには①類似性と②依拠性があるかで判断されます。

類似性

AIによって生成されたコンテンツが、既存の著作物と似ている場合、著作権侵害が成立する可能性があります。

似ているかの判断は最終的には裁判官の判断になりますが、既存の著作物と「オリジナリティがある部分」(特徴がある部分)が共通している場合には、類似性があると言えます。

依拠性

依拠性とは、生成されたコンテンツが既存の著作物を基に作られたと認められる状態を指します。

以下の場合には、依拠性が認められる可能性が高くなります。

  • AIが既存著作物を学習データとして利用している
  • プロンプトに特定の作品名や人物名など、既存著作物を特定可能な情報を含めている
  • AIが元データから高度に類似した生成物を作成する場合

プロンプトに関するリスク

AI利用時に使用するプロンプトは、生成結果に大きな影響を与えます。しかし、プロンプトの内容次第では著作権侵害のリスクを高める可能性があります。

問題となり得るプロンプトの例は次のようなものがあります。

  • 特定の人物名、作品名、ブランド名などの入力:例として「〇〇のスタイルで絵を描いて」といった指示は、その結果が著作権侵害につながる可能性があります
  • 特定の表現や要素を指定するプロンプト:特有の表現やキャラクターを模倣した生成物が作られた場合、法的な問題が生じるリスクがあります

このようなプロンプトの使用は、生成物の類似性や依拠性が高まるため、リスクを十分に理解した上で使用することが求められます。

ビジネス利用におけるリスク

AI生成コンテンツをビジネスに活用する場合、特に次の点に注意が必要です。

商業利用におけるリスク

生成コンテンツを商品デザインや広告素材として使用する場合、他者の著作権を侵害しているとみなされる可能性があります。例えば、生成されたロゴやグラフィックが他社のデザインと似ている場合、法的なトラブルが生じるリスクがあります。

法的リスクを軽減するための対策

AI利用時のリスクを最小限に抑えるためには、以下の具体的な対策を講じることが重要です。

プロンプトと生成プロセスの記録

生成AIの利用に際して、どのようなプロンプトを入力したのか、生成プロセスを記録しておくことが重要です。スクリーンショットや動画で記録を残すことで、万が一の法的トラブルの際に利用者の意図を証明する材料となります。

生成コンテンツの事前チェック

AIが生成したコンテンツが既存著作物と類似していないか、公開前に十分に確認する必要があります。専門家によるレビューや著作権検証ツールを活用することも効果的です。

契約内容の確認

使用するAIサービスの利用規約を確認し、生成コンテンツに関する権利の取り扱いや商業利用の可否について明確にしておくことが求められます。

AI開発における法律的注意点

AI開発では、アルゴリズムやモデル構築に必要なデータを収集し、それを活用するプロセスが不可欠です。このデータが著作物である場合、著作権法との関係を正しく理解し対応することが重要です。

学習データに関する著作権法の基本

AIモデルの開発では、大量のデータを使用してモデルを学習させます。この際に用いるデータが著作物に該当する場合、著作権法が適用される可能性があります。

著作権法第30条の4(情報解析のための利用)

日本の著作権法では、情報解析を目的とした著作物の利用について一定の条件下で許可されています。この規定に基づき、著作物の思想や感情の享受を目的としない利用であれば、著作権者の許諾なくデータを使用することが可能です。

しかし、以下の場合には適用外となるため注意が必要です。

著作物の思想や感情の享受を目的とする利用

これは元のコンテンツと同じようなアウトプットを出させることを目的にしている場合です。

例えばポケモンの画像を読み込ませてポケモンメーカーを開発するような場合、ポケモンの画像を読み込ませることは著作権侵害になります。

利用が著作権者の利益を不当に害する場合

またAI開発で他人のコンテンツを学習データとして使用する場合、著作権者の利益を不当に侵害する場合には、著作権法違反になります。

例えば、以下のような場合は違法となる可能性があります。

  • 有償で提供されているデータベースを学習データとして利用する
  • IDやパスワードで保護されているデータを無断で取得する
  • Webサイトの「robots.txt」に反してクローリングを行う

また海賊版サイトからのデータ収集、つまり著作権を侵害してアップロードされたデータを学習に利用すると、AI開発者も著作権侵害の責任を問われる可能性があるので注意が必要です。

著作権法違反を防ぐための対策

クローリング時には、「robots.txt」の内容を確認し、利用規約に違反しない範囲でデータを収集する必要があります。

また収集したデータの出所や内容を記録し、必要に応じて以下のような情報を保存した方が良いでしょう。

  • 収集時のクローリング設定や手順
  • 使用したデータの具体的な種類と量
  • データが公開されていたウェブサイトの利用規約

さらにAIが学習データに依拠した生成物を高確率で作らないよう、以下の技術的措置を講じる必要があります。

  • 生成物の類似性を検出するシステムの導入
  • 元データと生成物の類似性を自動的に検証し、問題のある生成物を排除する措置

自社コンテンツが著作権侵害された場合の対応

生成AIの普及に伴い、自社が保有するコンテンツがAI技術に利用され、著作権侵害が発生するケースが増加しています。このような状況では、迅速かつ適切に対応することが企業の権利を守る上で重要です。

著作権侵害への対応ステップ

ステップ1:証拠の収集

著作権侵害を立証するためには、十分な証拠が必要です。以下の証拠を迅速に収集しましょう。

侵害の状況証拠:侵害者がAIにどのようなプロンプトを入力したのか、また学習データの出所に関する情報を収集します。

ステップ2:侵害者への通知

著作権侵害が確認された場合、まず侵害者に通知を送ります。この通知には、以下の要素を含める必要があります。

  • 自社コンテンツが著作物である旨
  • 侵害行為の具体的な内容
  • 侵害行為の停止とコンテンツの削除要求

通知は、内容証明郵便など公式な形で送付することで、後の法的手続きにおける証拠となります。

ステップ3:交渉による解決

通知を受けた侵害者が対応に応じる場合、和解を通じて問題を解決するのも一つの手です。和解では損害賠償の金額について、交渉することになります。

ステップ4:法的手続きの開始

侵害者が通知に応じない場合や問題が解決しない場合、法的手続きを検討します。具体的な方法としては以下が挙げられます。

  • 民事訴訟:損害賠償請求や侵害コンテンツの差し止めを求めます
  • 刑事告訴:悪質な場合は、著作権法違反として刑事事件化することも可能です

学習データとしての利用を防ぐための対策

AI技術に自社コンテンツが無断で利用されることを防ぐためには、以下の対策が有効です。

技術的措置

AIが自社コンテンツを学習データとして使用することを防ぐため、以下の技術的措置を講じます。

robots.txtの設定

自社のウェブサイトに「robots.txt」ファイルを設置し、AIクローラーによるデータ収集を制限します。

アクセス制限

データベースやウェブサイトにIDやパスワードによるアクセス制限を設け、無断利用を防ぎます。

コンテンツの有償提供

自社コンテンツを有償で提供するモデルを導入することで、AI学習用データとして販売することで、無断利用を防止しながら利益を得ることが可能です。

まとめ

生成AIの利用が広がる中、著作権問題は企業にとって重要な課題となっています。本記事で解説した基本的な知識や実務的な対策を活用し、法的リスクを最小限に抑える努力が求められます。今後もAI技術の進化とともに、関連法規やガイドラインの変化に対応していくことが重要です。

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