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従業員に貸与しているPCのログオンやログオフ時刻をチェックして労働時間管理に利用してもよいですか?【2022年7月加筆】

労働時間管理は会社の責任

未払残業代請求訴訟などでは、実際に「その従業員がどのくらいの時間働いていたのか」ということが、問題になります。

裁判の本来のルールであれば、未払残業代を請求者する労働者側が、これだけ働いたという証拠を用いて、主張する必要があります。

しかし、実際の裁判では、会社側に従業員の労働時間管理をする義務があるとして、会社側に労働時間の証拠を出すように言われることが多いです。

会社側がその証拠を提出できないと、労働者側が主張する労働時間が、通ってしまう可能性があるのです。

タイムカードがあれば一番よいのですが、導入していない企業も多いはず。そこで、会社が貸与したパソコンのログを確認し、ログオン、ログオフ時間から、労働時間を割り出したいと考えてた場合、このようなことは許されるのでしょうか?

会社には、施設管理権がある

会社は、会社の備品については、会社が管理する権限があります。これを施設管理権といいます。

これは、最高裁の判例でも「職場環境を適正良好に保持し、規律ある業務の運営体制を保持し得るように当該物的施設を管理利用する使用者の権限」とされています。

よって、会社が従業員に貸与しているPCやスマートフォン、タブレットについても、会社にはその管理権限があります。

つまりその従業員が、どのように会社貸与のパソコンを使用していたかを確認、把握することは、会社側は、施設管理権に基づいて行うことができるのです。

従業員にもプライバシーの問題が

上記のような、会社の施設管理権ですが、基本的には広く認められているものです。しかし、会社が貸与しているとはいえ、従業員のパソコンの利用状況を確認するということは、従業員のプライバシーとの衝突が生じます

ただ、PCのログオフログオン時刻については私生活上の事実に当たりません。また、ログオフログオン時間は、個人情報保護法の個人情報の定義にも該当しません

もっとも、PCのログからは、サイトの閲覧履歴やファイルの操作状況等、ログオンログオフ時刻以外の情報も把握することができるようになります。それらの情報は一定のプライバシー性を有していますので、それに対する配慮が必要です。

会社側は正確な労働時間の把握が必要

会社は労働法制度上、従業員の労働時間を管理する義務や従業員が過重労働等によって、心身の健康を損なうことのないように配慮すべき義務が生じます。

労働時間の把握は、行政通達でも原則として客観的記録に基づくべきであるとされています。PCのログオンログオフ時刻は、一定の労働時間の把握にはなります。

ただ、PCの起動時間がそのまま従業員の労働時間に当たるわけではないですよね。休憩時間でも、PCを入れたままにしておくことも多いと思うので、一つの判断材料にはなりますが、それが全てではありません。

しかし、会社が他にタイムカードなどの労働時間管理していない場合には、PCのログオンログオフ時刻が実労働時間とされる可能性があるので注意が必要です。