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逃がさない!別居中の夫に「Facebookメッセージ」で離婚書類を送信。日本では認められるの?

ニューヨーク州裁判所、フェイスブックメッセージで離婚書類の送付認める

米ニューヨーク州の地方裁判所は、4年間連絡の取れない夫に妻がフェイスブック(FB)で離婚書類を送付することを許可する決定を下しました。

女性は2009年に夫と結婚しましたが、価値観の不一致などのため、結婚早々に別居。夫は2011年以降、住所不定になり、その後住所が分からず、電話かフェイスブックでしか連絡が取れない状況でしたが、夫は離婚を拒否していました。

通常、離婚したい妻としては、離婚関係書類や裁判所への出頭命令などを郵送しなければなりません。しかし、これを、米ニューヨーク州の地方裁判所は、Facebookメッセージで送ることを許可したのです。

参考記事:逃げても無駄よ!フェイスブックで離婚手続き…米地裁、妻の書類送付認める 産経ニュース

日本では考えられない 裁判書類をメッセージ機能を使っての送信

ニューヨーク州地裁のマシュー・クーパー判事は、「多くの人が利用している交流サイトを、裁判所への召喚状などの伝達手段として認めるべきだ」と言い切りました。

これはアメリカでの判断ですが、日本でも、配偶者の行方が分からなくなってしまったが、FacebookやLINEなどではつながっているという方も多いはず。そのときに「フェイスブック等での離婚手続き」は、日本では認められるのでしょうか?

日本では、裁判をするには、相手に対する裁判書類を『送達』することが必要です。送達は、紙の書類を郵送等により交付する方法が原則なのです。

フェイスブックなどのメッセージ機能での送信は認められていません。

相手の住所が分からない場合はどうするのか そんなときには「公示送達」

それでは、相手の住所がわからず、書類が送れない場合、日本ではどうすればよいのでしょうか。

この場合は、「公示送達」という制度があります。

裁判所に行くと、裁判所前の掲示板に、「呼び出し状」といった書面が張り出されています。あれは、裁判所の掲示板に書面を『公示』することで、送達したことにするという制度です。

この公示送達の制度を使うと、相手に書類が届かなくても、送達が完了したことになり、相手方が出頭しないまま裁判所の離婚判決をもらえます。ただ、この公示送達の制度は非常に面倒くさい手続きが必要になります。

SNSによる送達手続き 日本で実用化は困難!?

このようなことを考えると、SNSのメッセージ機能を使って書類を送った方が相手にも伝わるのでいいのではないかと思われるかもしれませんが、日本の裁判所が、これを認めるのは当分(永久に?)ないのではないかと思います。

日本の裁判所は、いまだに郵送やFAXで、文書のやり取りをしています。
そういう風土の裁判所が、SNSでのメッセージ機能を使っての文書の送付を認めることは、相当な時間を要すると思います。