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事業者と求職者とのプラットフォームサービスは「職業紹介」許可が必要なのか【2021年6月加筆】

IT企業のための法律

事業者と求職者とをつなぐプラットフォームの法律問題

事業者と求職者をつなぐプラットフォームサービス。
日本は、人材不足が深刻で、事業者としても、採用したいというニーズが高まっています。

そこで、事業者と求職者との間に入って、マッチングさせるプラットフォームサービスを展開する場合、法律的には、どうなのでしょうか。

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職業安定法上の「職業紹介」に当たるか

ここで問題になるのが、職業安定法上の「職業紹介」に当たるかです。

職業安定法は、企業による労働者の労働者の募集・職業紹介・労働者供給について規制している法律です。

職業紹介事業を行う場合は、原則として行政(厚生労働大臣)の許可が必要になります。

「職業紹介」の定義

「職業紹介」とは、職業安定法上は「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんすること」とされています。

つまり「雇用関係の成立をあっせん」がポイントになるのです。

雇用契約成立のプラットフォームであること

「職業紹介」は、あくまで「雇用契約」に関するものです。

クラウドソーシングサービスのように、仕事を発注したい人と受注したい人のマッチングは、業務委託(請負)契約のあっせんであり、「雇用契約」のあっせんではないので「職業紹介」には当たりません。

職業安定法上の「あっせん」とは

「あっせん」とは、判例によれば、求人および求職の申込を受けて求人者と求職者の間に介在し、両者間の雇用関係の成立のために便宜をはかり、その成立を容易ならしめる行為をいうとされています。

ポイントは「便宜をはかり、その成立を容易ならしめる行為」を行っているかどうかです。転職エージェントのように、事業者の要望、求職者の要望をヒアリングし、紹介して、就職させるものなので、「職業紹介」に当たります。

プラットフォームは「あっせん」にあたるか

事業者と求職者を結び付けるマッチングサイトは「あっせん」にあたるのでしょうか。

この点、判断基準については、厚生労働省が、「民間企業が行うインターネットによる求人情報・求職者情報提供と職業紹介との区分に関する基準について」というガイドラインを公表しています。

それによれば、以下のいずれかに該当する場合には、雇用関係成立のあっせんを行うものとして、「職業紹介」に該当するとされています。インターネットによる求人情報・求職者情報提供は、次の1から3までのいずれかに該当する場合には、職業紹介に該当する。

  1. 提供される情報の内容又は提供相手について、あらかじめ明示的に設定された客観的な検索条件に基づくことなく、情報提供事業者の判断により選別・加工を行うこと。
  2. 情報提供事業者から、求職者に対する求人情報に係る連絡又は求人者に対する求職者情報に係る連絡を行うこと。
  3. 求職者と求人者との間の意思疎通を情報提供事業者のホームページを介して中継する場合に、当該意思疎通のための通信の内容に加工を行うこと。
  4. 1~3のほか、情報提供事業者による宣伝広告の内容、情報提供事業者と求職者又は求人者との間の契約内容等から判断して、情報提供事業者が求職者又は求人者に求人又は求職者をあっせんするものであり、インターネットによる求人情報・求職者情報提供はその一部として行われているものである場合には、全体として職業紹介に該当する。

職業紹介に該当する例

プラットフォーム事業者が、自ら積極的に事業者又は求職者に連絡を行い、応募又は採用の勧奨、採用面接日時の調整、情報の追加的提供等を行うことは、雇用関係成立のための便宜を図るものといえ、職業紹介に該当します。

これらを全てインターネットで行っても、職業紹介に該当します。

プラットフォーム事業者が「貴方にふさわしい仕事を面倒見る」、「貴社に最適の人材を紹介する」等とうたって事業者又は求職者を募り、当該事業者又は求職者に対し、あっせんしようとする求人又は求職者の事業所名、氏名、電話番号等をインターネットを通じて提供することは、全体として職業紹介に該当します。

職業紹介に該当しない例

プラットフォーム事業者のホームページ上にある求人の事業者又は求職者に対し、事業者又は求職者が当該ホームページを経由して電子メールを送信することにより直接オンライン上で応募又は勧誘できる仕組みを設ける場合には、このことによって「職業紹介に該当するものではない」とされています。

「職業紹介」に該当した場合の義務

職業安定法上の「職業紹介」に該当する場合には、厚生労働大臣の許可を受ける必要があります。

そして、これを無許可で行うと、1年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。

当事者間のやり取りに介入しないことが大事

以上のように、プラットフォーム事業者として、職業安定法上の「職業紹介」に該当しないようにするためには、事業者と求職者のやり取りに介入しないことが必要です。

あくまで、事業者と求職者が直接のやり取りをするプラットフォームという位置づけを守るようにしましょう。