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SES契約が「労働者派遣」と言われないための具体的対策は何をすればよいですか?【2022年1月加筆】

IT企業のための法律

SES契約は、労働者派遣、偽装請負の可能性も

システム開発で、よく行われているSES契約。SES契約は、人数や工数で料金が決まるのが通常です。

法律上は「準委任契約」ということになり、実際の現場では「業務委託契約」などの名称で、契約されることが多いです。

業務委託なんだから、何らの法律違反にならないだろうと思うかもしれませんが、もしかしたら、労働者派遣法違反や偽装請負になってしまう可能性があるのです。

参考ブログ:SES契約は労働者派遣?偽装請負にならないためにはどうすればよいの?

労働紛争は増えている

SES契約は、どこもやっているし、問題になることはないだろうと思うかもしれません。しかし、「厚生労働省の労働政策審議会 建議」では、労働問題での指導監督の強化」を打ち出しました。

そして、平成27年9月11日に、労働者派遣法の改正がなされました。これは、労働者保護を鮮明に打ち出した改正内容になっています。

また、厚生労働省が行っている、総合労働相談の件数が、1,033,047件と100万件を突破しました。

さらに、厚生労働省から企業への助言・指導申出件数が、9,471 件、あっせん申請件数が5,010件と、行政からの締め付けも厳しくなっているのです。

違法なSES契約にならないために

SES契約を法律違反にしないためのポイントは、以下の通りです。

  1. SESを提供する企業が、作業の完成について事業主として財政上、法律上のすべての責任を持つこと
  2. SESを提供する企業が、作業に従事する自社労働者を指揮監督すること
  3. SESを提供する企業が、作業に従事する自社労働者に対し、使用者として労働法規に規定された全ての義務を負うこと

特に問題になるのは、(2)指揮命令関係です。

SESを提供する企業の従業員が、受入先企業に常駐し、受入先企業の担当者から直接指示命令がある場合があります。このような指揮命令ができるのは、労働者派遣の場合だけであり、労働者派遣事業法により、厳格に禁止されてるのです。

SES契約は、契約書と実態を整備する必要

上記のような指揮命令関係を気を付けるということは、例えば、現場には、2人以上の従業員を行かせて、一人を責任者として、その責任者から指揮命令させるようにするなどの方法が考えられます。

クライアントとの契約書も、指揮命令関係については、SESを提供する企業側にあるという風に明記しておくなど、形式面と実態面で、労働者派遣や偽装請負と言われないことが必要なのです。

法律的にも、世の中の流れとしても、労務環境には敏感になっています。
事業者として、法律を守る対策を取っていきましょう!