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【資金決済法】ウェブサービスの二次通貨・ポイントに関わる法律「前払式支払手段」を解説。【2023年3月加筆】

課金サービスに必要な法律

ゲーム内通貨・ポイントを購入できる「二次通貨」

ゲーム内ポイント・ゲーム内通貨は、ウェブサービスにとって、必要不可欠のものになっています。

ゲーム内ポイント・ゲーム内通貨は、現金を払って購入するものです。そして、そのゲーム内ポイント・ゲーム内通貨を使って、さらにアイテムや通貨を購入するというサービスがあります。

現金⇒ゲーム内通貨・ポイント⇒二次通貨・アイテム

という流れです。

現金ではなく、ゲーム内ポイント・ゲーム内通貨を使って、購入する「二次通貨・アイテム」について、法律的には、どのような規制があるのでしょうか。

ゲーム内通貨は、資金決済法上の「前払式支払手段」に当たるか

ゲーム内通貨・ポイントは、資金決済法上の「前払式支払手段」に該当するかを検討する必要があります。

「前払式支払手段」に該当するかは、以下の要件を満たすかどうかで判断します。

  1. 金額等の財産的価値が記録されている
  2. 金額・数量に応じた対価を得て発行されていること
  3. 代価の弁済のために使用できること

上記1は、例えば、「100ゴールド」「魔法石●個」といった形で金額や数量が記録されること
上記2は、現金などの対価を得て発行されること
上記3は、そのポイントやアイテムが、他の商品やサービスの提供に使用できることをいいます。

よって、ユーザーから現金でゲーム内通貨やアイテムなどを購入する場合には、上記3要件を満たすので「前払式支払手段」に該当する場合が多いのです。

「二次アイテム・通貨」は資金決済法上の「前払式支払手段」に当たるか

それでは、ゲーム内通貨で、アイテムやポイントを購入した場合に、その「アイテム」や「ポイント」は、資金決済法上の「前払式支払手段」に該当するのでしょうか。

「二次アイテム・通貨」は、上記の要件でいうところの「1)金額等の財産的価値が記録されている」は、要件として満たします。

また、「前払式支払手段」に該当するようなゲーム内ポイントや通貨を使い、購入しているので、「金額・数量に応じた対価を得て発行されていること」という要件も満たしそうです。

「代価の弁済のために使用できること」という要件が満たされるかどうかですが、これは、「二次アイテム・通貨」が何に使われるかによって、異なります。

つまり、その二次通貨・アイテムを使って、他のアイテムと交換したり、事業者からサービスを受けられるといった効果があれば、この要件も満たすことになり、「二次アイテム・通貨」も、資金決済法上の「前払式支払手段」といえるでしょう。

LINEゲーム内の「二次通貨・アイテム」も「前払式支払手段」と認定

昨年話題になったLINEゲーム内の「二次通貨・アイテム」の「宝箱の鍵」も、関東財務局から、「前払式支払手段」と認定されました。

LINEゲーム 一部アイテム通貨認定 関東財務局

「前払式支払手段」に該当したら、どうなる

もし「二次通貨・アイテム」が「前払式支払手段」に該当すると、どうなるのでしょうか?

「前払式支払手段」に該当すると、企業にとって、資金決済法上の様々な義務が生じます。特に負担となるのが、供託義務です。

ポイントや仮装通貨の未使用残高が1,000万円を超えるときには、未使用残高の2分の1以上の金額営業所の最寄りの供託所に供託しなければなりません。供託をするということは、資金が眠ってしまうということであり、企業にとっては命取りになりかねない事態なのです。

なお、この供託義務は、銀行等との間で、発行保証金保全契約をすることで、その一部を免れることもできます。

ゲーム内通貨・アイテムの法的判断は、慎重に

以上のように、ゲーム内ポイント・ゲーム内通貨が、資金決済法上の「前払式支払手段」に該当するかは、非常に難しい判断が必要です。

しかも、後から、「前払式支払手段」に当たるとされると、供託義務などが発生して、企業にとっては、命とりになりかねません。

事業者としては、十分に検討するようにしましょう!