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寄付型・購入型クラウドファンディングを運営するときの法的ポイントをITに強い弁護士が解説【2023年2月加筆】

インターネット法律

寄付型・購入型クラウドファンディングで注意すべき点はどこ?

クラウドファンディングとは、「新規・成長企業と投資家をインターネットサイト上で結びつけ、多数の投資家から少額ずつ資金を集める仕組み」です。

前回は、ファンド型クラウドファンディングの法的ポイントを取り上げました。
参考ブログ:弁護士が解説!ファンド型クラウドファンディングの運営に必要な法的ポイント

今回は、寄付型・購入型クラウドファンディングの法的ポイントを見てみたいと思います。

寄付型クラウドファンディングとは

寄付型クラウドファンディングとは、ある案件に出資者がお金を出すが、出資者にリターンがないタイプです。被災地支援や途上国支援などの公益的な目的で行われます。

JAPANGIVINGなどがこの類型です。

購入型クラウドファンディングとは

購入型クラウドファンディングとは、ある商品・サービスの購入者を募り、購入者から前払いで集めた代金を元手に実際に商品・サービスを開発し、購入者に完成した商品・サービスを提供されるものです。

CAMPFIRE READYFORなどがこの類型に当たります。

寄付型クラウドファンディングにおける規制の適用関係

寄付型クラウドファンディングにおいては、寄付者が資金提供の時点で、寄付を受けた側への贈与として課税されます。

例えば、個人から個人に寄付を行ったような場合には、寄付を受けた個人には、贈与を受けた金額が110万円(基礎控除)部分を超えた金額に贈与税が加算されます。

また、個人から法人に寄付を行った場合には、寄付を受けた法人は、贈与を受けた額(受贈益)に対して、法人税が加算されます。なお、寄付は、課税対象外取引になるので、消費税は加算されません。

寄付を行った個人は、一定の範囲について、所得控除(寄付金控除)を受けることができます。

返礼品には注意が必要

寄付型クラウドファンディングといっても、何もリターンがないわけではなく、感謝状や氏名の掲載などのリターンが設定されていることが多い。また、中には、ちょっとしたお礼のプレゼントが渡されることもあります。

寄付型クラウドファンディングは、資金提供者が、寄付金控除になるというのがメリットの一つです。しかし、この返礼品が過剰なものになってしまうと、寄付とはみなされず、寄付金控除の恩恵が受けられなくなってしまう可能性があります。

制度は違いますが、ふるさと納税制度における総務大臣通知では、換金性の高いプリペイドカード高額(寄付金に対して返礼割合の高い)な返礼品の提供を行わないように求められています。

購入型クラウドファンディングと特定商取引法

次に、購入型クラウドファンディングですが、これはインターネット上の物を販売していることと、同じようにみられています。

そこで、購入型クラウドファンディングを利用するプロジェクト実施者は、特定商取引法の適用があります。この場合、プロジェクト実施者には、広告の表示義務などの制約が課されます。

一方、クラウドファンディング業者は、購入者とプロジェクト実施者との取引の機会を提供するプラットフォーム提供者に過ぎず、取引の機会を提供しているだけなので、プロジェクト実施者のような法的義務は生じません。

もっとも、クラウドファンディング業者とプロジェクト実施者が一体となっていると見える場合には、クラウドファンディング業者にも、法の適用が及ぶ可能性があります。

多くのクラウドファンディングの利用規約では、クラウドファンディング業者がプロジェクト実施者に代わって、集めた金額を受領する権限があることが明記されています。

クラウドファンディング業者は、利用規約などで、自己の責任について明確に記載することが必要です。

購入型クラウドファンディング業者とエスクロー取引

購入型クラウドファンディング業者は、調達した資金の5%から20%程度の手数料を徴収し、残りをプロジェクト実施者に支払うことが通常です。そのため、資金の流れからすると、購入者から依頼を受けて購入代金をプロジェクト実施者へ送金しているようにみえます。

このようなことは、為替取引(エスクローサービス)と呼ばれ、資金決済法上の資金移動業の登録が必要になります。

もっとも、法律構成によっては、資金移動業に当たらない法律構成も取れます。
参考ブログ:【資金決済法】商取引の安全性を保証するエスクローサービスを行うための法的注意点。

この場合には、利用規約で、きちんと法律関係について、規定しておくことが必要なのです。

法律を守って、クラウドファンディング

以上のように、クラウドファンディングには、様々な法律があります。後から、法律違反していた!なんてことが起こらないように、しっかりリーガルチェックをしましょう!