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「カリビアンコム」での無修正動画配信で逮捕!海外サーバーを使用しても日本の刑法が適用される?【2023年2月加筆】

法律時事ニュース

「カリビアンコム」で無修正動画を配信したとして日本の業者が逮捕

無修正のわいせつ動画をインターネットで配信したとして、警視庁と愛知、静岡両県警の合同捜査本部は、わいせつ電磁的記録等送信頒布容疑で、アダルトビデオ(AV)制作会社「ピエロ」社長で逮捕されました。

参考記事:「カリビアンコム」で無修正動画を配信 AV制作会社を摘発

カリビアンコムは、米国の会社です。当然、サーバも海外にあります。そして、いわゆる「無修正」アダルトサイトは、米国では禁止がされていません。一方、日本では「無修正」のような「わいせつ画像」を配信することは、刑法上禁止されています。

今回の問題は、米国では問題ない「無修正」AVを、米国の配信会社を通じて、日本で配信された場合に、日本の刑法が適用されるのかという問題です。

日本の顧客向けであれば、日本刑法の適用がある?

この問題について、最高裁で平成26年11月25日の判例があります。

  • 日本在住の被告人が,米国の共犯者らとともに,日本国内で作成 したわいせつな動画等のデータファイルを米国の業者に送る
  • 米国在住の者において米国内に設置されたサーバに、わいせつデータを記録,保存
  • 日本人を中心とした不特定かつ多数の顧客に同データファイルをダウンロードさせる方法によって有料配信する日本語のウェブサイトを運営した

この事案について判例は、日本国内で撮影・編集し、米国の業者に送信した日本国内の者と米国でダウンロード販売している者とを共犯と認定しています。

そして、日本人向けのウェブサイトでダウンロードさせる方法によって有料配信する行為は、日本刑法上の「頒布」に当たるとしています。

さらに「無修正」AVサイトで販売する目的で撮影・編集した者には「有償頒布目的所持罪」(刑法175条2項)も成立すると認定しています。

動画を撮影した者と配信業者は共犯関係

報道によると、動画の撮影自体は日本で行い、その後、台湾にある別会社が内容の調整や動画の納品を行い、カリビアンコムで配信されていたということです。

上記最高裁の例によると、日本国内で撮影したものと、米国内のカリビアンコムは、「共犯」関係にあるとされる可能性があります。そこで、今回、日本の業者が逮捕されたと思われます。

本件では国際刑事警察機構(ICPO)を通じて米国と台湾に捜査協力を要請しているとの報道もあります。

従来は、海外サーバであれば、「無修正」動画もOKなのではと言われていましたが、上記最高裁や今回の事例によって、日本の業者と海外の配信業者が「共犯」と認定されれば、規制される可能性が高くなります。

法的な問題点も

今回の事件でも、摘発された日本の業者と「カリビアンコム」が「共犯」と認定されれば、日本の業者は、日本の刑法が適用されることになります。しかし、上記最高裁判例については、問題点も指摘されています。

つまり、米国の刑法では適法な行為をしているのに、日本刑法では共犯者とされてしまえば、日本国内に入ると逮捕されてしまう可能性があります。

国よって、「わいせつ」性の概念や性風俗に関する考え方は異なるにも拘わらず、これで良いのだろうかという疑問もあります。
いずれにしても、今回の事件は注目です!