IT法務・AI・暗号資産ブロックチェーンNFT・web3の法律に詳しい弁護士|中野秀俊
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IT企業専門弁護士が、日本での仮想通貨ICOを法律的に解説!

仮想通貨・デジタル通貨に関する法律

日本で、ICOをすることは法律的にどうなのだろう

ICOとは、Initial Coin Offeringの略で、暗号通貨・仮想通貨におけるIPOのようなものです。

つまり、企業またはプロジェクトが、自らコインやトークン(株式のようなもの)を発行し、資金調達を行うことをいいます。

仮想通貨事業で使われる「トークン」の法律規制はどうなっているの?

仮想通貨自体が、これまで規制がなかったので、日本において自由にICOすることもできましたが、仮想通貨法(改正資金決済法)が4月1日に施行されましたので、一定の法規制を受けることになりました。

それでは、日本企業が、ICOをする場合には、法律上、どうなっているのでしょうか?

法律上の仮想通貨に該当するか?

まず、仮想通貨法(改正資金決済法)が適用されるためには、法律上の仮想通貨に該当する必要があります。仮想通貨に該当すると、それを販売する場合には、行政に対して、仮想通貨交換業の登録をする必要があります。

金融庁のガイドラインにみる仮想通貨の範囲・仮想通貨交換業者の該当性のポイント

仮想通貨の定義は、以下のようになっています。

  1. 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、
  2. 不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法に より記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、
  3. 電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

「仮想通貨」の定義とは?仮想通貨規制法案の概要をIT弁護士が解説!

つまり、「仮想通貨」に該当するかのポイントは、以下の2つです。

  • 「代価の弁済(代金の支払)のために不特定の者に対して使用することができる」
  • 「不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる」

金融庁ガイドラインでは「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる」ことを判断するに当たっては、以下の事項を考慮するとされています。

  • 発行者と店舗等との間の契約等により、代価の弁済のために仮想通貨を使用可能な店舗等が限定されていないか
  • 「発行者が使用可能な店舗等を管理していないか」等について、申請者から詳細な説明を求めることとする

つまり、特定の発行者がいて、その発行者が認めた範囲内で使用できる場合には、「仮想通貨」には該当しないのです。

また「不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる」ことを判断するに当たっては、以下の項目について申請者から詳細な説明を求めることとしています。

  • 発行者による制限なく、本邦通貨又は外国通貨との交換を行うことができるか
  • 本邦通貨又は外国通貨との交換市場が存在するか

こちらも特定の発行者がいて、特定の発行者が、法定通貨との交換を制限している場合には「仮想通貨」には該当しないのです。

「仮想通貨」に該当しない場合には、資金決済法上の前払式支払手段に該当する可能性があり、該当すれば、「前払式支払手段」の規制(登録制や供託義務)などが発生しますので、注意が必要です。

特定の発行者がいて、流動性がない場合には、仮想通貨に該当しない可能性があります。

まずは、日本で、ICOを発行するにあたり、発行するコインが「仮想通貨に当たるのか」を検討する必要があります。

先日6月8日の参議院の財政金融委員会でも、ICOについて取り上げられていました。

http://online.sangiin.go.jp/kaigirok/daily/select0105/main.html

現在、日本で、もしICOやろうと思ったら、そもそもできるんでしょうか。また、できるとした場合に、この投資家保護のルール等、これどうなっているのか、お伺いしたいと思います。

○政府参考人(池田唯一君) 御指摘のイニシャル・コイン・オファリングでございますけれども、例えば発行体企業が独自の仮想通貨を発行して、投資家がその仮想通貨を購入する、そして発行体は得た資金を用いて事業を行って、投資家には事業から得た収益を配当すると、そうした事例が海外にあると承知をしております。

こうしたものが日本で行われた場合にどのような法令が適用されるかということについて、個々の事例ごとに厳密には考えていく必要があると考えておりますけれども、今申し上げたような海外の事例を念頭に申し上げますと、一つには、仮想通貨を投資家に販売する場合には、一般に資金決済法に基づく仮想通貨交換業に対するルールが適用されることになろうかと考えます。

金融商品取引法上の規制

金銭を出資し事業を行い、その利益から配当をするというのは、金融商品取引法上のファンド規制(集団投資スキーム規制)がかかります。

よって、ICOとして金銭を出資してもらい、その後、利益を分配するためには、金融商品取引法上の規制がかかる可能性があります。

先ほどの参議院の財政金融委員会のやり取りでも、次のように話されています。

出資等をされた資金を用いて事業を行い、その事業から生じる収益の配当等を受けることができる権利を仮想通貨として販売するといった場合には、一般に金融商品取引法に定めます金融商品取引業に対するルールが適用されることが考えられようかと思います

ただし、金融商品取引法上のファンド規制は、出資者が金銭や有価証券を出資という場合に限られており、仮想通貨で出資してもらう場合は、含まれていません。

よって、ビットコインなどで、出資を受け付けるという方法であれば、金融商品取引法上のファンド規制を回避できる可能性があります。

ICOは、法律的な観点からの検討が必要

上記のような、ICOですが、日本で行う場合には、慎重な検討が必要です。仮想通貨の法規制は、目まぐるしく変わります。

参議院の財政金融委員会のやり取りでも、次のように触れられています。

いずれにしましても、金融庁としましては、仮想通貨に係るものも含めまして取引の状況を注視して、投資者保護等の観点から必要があれば適切に対応していきたいというふうに考えているところでございます。

これからも最新の状況をチェックしましょう!