IT法務・AI・暗号資産ブロックチェーンNFT・web3の法律に詳しい弁護士|中野秀俊
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クラウドソーシングサービスで得た仕事を直接取引するのは違法?

クラウドソーシングで大きな案件は直接取引?

クラウドソーシングの大手「クラウドワークス」が、登録者数が80万人もいる中で、月収20万円超えのユーザーが111人しかいないことが、話題になりました。
https://news.careerconnection.jp/?p=21360

この結果に対して、「在宅だけで生きていくのは大変」「やっぱり正社員か…」との意見が多く上がりました。しかし、一部のブロガーからは、20万円超のユーザーはもっと多いという声もあります。

複雑で高額な案件は、クラウドソーシングサービスを通さずに、ユーザーと企業が直接連絡を取り合う、つまり「直接取引」をするようになるというのがその理由。何度か取引をしていて、お互いに信用が出来てくるとクラウドサービスを経由しなくなるというのです。

しかし、クラウドソーシングサービスを使っているにもかかわらず、直接取引して法律的に問題はないのでしょうか?

利用規約違反で損害賠償請求

クラウドサービス事業者の利用規約には、いわゆる「直接取引」を禁止している条項を置いているところが多いです。

クラウドソーシングサービス事業者は、自社のサービスの利用料で成り立っています。当該サービスを利用せずに、直接取引をしてしまうと、事業者は収益を得ることができなくなります。そのため利用規約で直接取引を禁止しているのです。

利用規約を守らなければ契約違反

利用規約というのは、事業者とユーザーとの契約書ですので、これに違反すれば契約違反ということになります。

クラウドソーシングサービス事業者の利用規約では、直接取引が発覚すると、当該クラウドソーシング事業者が受け取るべき利用料相当額が違約金として課されるところもあります。

直接取引が発覚するケースは、少数

事業者としては、利用規約に、上記のような直接取引禁止の事項を規定しておくことは必須であると思います。しかし、現実問題として、直接取引が成立したかを確認することは困難です。

直接取引しているユーザー同士のやりとりを監視するやユーザー自ら開示するなどのことがない限り、発覚することは少ないのが実情だと思います。

クラウドソーシングサービス事業者にとっては、利用規約などを整備しておくことは非常に重要ですが、直接取引よりも、自社サービスを利用する方がお得であるというユーザーに思わせ、自社サービスを利用してもらう工夫をすることも大事になります。

私も、多くのビジネスモデル相談を受けていますが、法律面だけではなく、事業面からも、どうやって継続的な収益をあげていくかを、経営者と一緒に考えています。ウェブサービス事業者にとっては、法律面と事業面の両方の観点から検討していくことが大切なのです。